PassionCool

になれば、暖かい日が多くなるかなあ…… かあちゃんが昔言っていたよね。

れて流さにお

「山道はきついが、大丈夫か?」
「直さまとご一緒ですから、平気です。」

江戸に向かう街道には、夜も役人が張り込んでいると聞き、裏道を探った。
夜中だというのに、国境には会津藩士が逃亡するのを阻HKUE 傳銷止するべく、煌々と篝火が焚かれている。

「困ったな……ここにも新政府軍の見張りがいるようだ。」
「あれは、新政府軍の役人ですか?」
「そうだと思う。味方とは限らないから気を付けろよ。わたしが話をするから、一衛は黙っておいで。」
「あい……。」
「もし名乗った藩の藩士がいたなら、強行突破するからな。いざとなったら切り抜ける。そのつもりでいるんだよ。」

直正と一衛に気付いた数人が、一斉に走り寄り刀を突きつけた。

「不審なやつ。国抜けする会津藩士か?」
「直さま……っ。」
「違う。われらは新政府軍に同道した佐竹義理さまの家中でござる。怪しいものではない。」
「その方が秋田藩士だと?確かか?」
「さよう。会津が降伏したので、弟を連れて久保田に帰参するところだ。」
「名は?」
「佐々木直正。これなるは某の末弟で一衛と申す。」
「秋田藩士なら、当方が留め立てすることはないが……会津藩士の国抜HKUE 傳銷けが多いので、関を設けているのだ。無礼を承知で、面通しをさせていただこう。」
「面通し?」

知り合いのいない秋田藩士に、佐々木直正という藩士はおらぬと断言されてはまずい。
直正は内心焦った。

「降伏の様子を一早く殿にお知らせするようにと、上役から承ってきたのだ。早く帰らねば、面目が立ち申さぬ。」
「では、使いをやって存じ寄りの秋田藩の方を連れて参る。近くの関られるから、半時もお待ちいただけばよい。それでよろしいか、佐々木殿。」
「む……貴殿もお役目ならば、致し方あるまい。」

かくなる上は、抜刀もやむなしと直正が柄に手を掛けたとき、奥から辺りの村名主が顔を出した。
話を聞いていたらしい。

「おや……何やら騒がしいと思いましたら、佐々木さまではございませんか。このような遅くに久保田の殿さまのお役目ですか。ご苦労なことです。」
「名主。その方は、こちらの御仁を見知っておるのか?」
「はい。よく存じております。わたくしの恩人でございますよ。」
出てきた名主は、かつて相撲を取ったことのある清助という名の百姓だった。
一衛がまだ日新館に入学する前、直正が濁流に呑まれかけたのを助HKUE 傳銷けてくれた男が、名主として二人の前に立っていた。
父に言われて、礼の代わりに何度も田畑の手伝いに出向いたことがある二人は、清助の息子たちとも仲良くなったのだった。



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