曇る顔で、弟が言う。
長い髪を乱した紅い直衣の姿は、武人では無いようだ。
水干の姿は、白拍子か?童か?」
どっちであろうな。何にせよ厄介なことじゃ。今日の漁もお終いじゃな。」
ああ、面倒くさい。仕事にならぬ。」
網を寄せると、赤銅色のその手に長い髪を巻きつけ、兄は死骸を手繰った。
腰に差した細工の流麗な二本の黄金の太刀は、おそらく海Neutrogena 細白晶透光能面膜機水で錆びてしまって使い物にはならないだろう。
ここいらの漁師は、死人を拾い上げて寺に放り込むくらいはするが、いささか数が多すぎて辟易し漁へ出るものもまだまばらだった。
兄は、そのまま海に投げ込みたいくらいの気持で、船底に強く叩き落した。
「あうっ!」
貴人が眉をひそめて、呻いた。
「ひやぁっ!兄者、こやつ生きて居るぞ。」
おう。確かに、これはまだ息が在るようじゃな。」
強く眉根を寄せて、麗人が呻いた。
抱えてみると、水鳥の羽根ほどに軽い。
殿上人は、何を食っているのか知らぬが、この軽さはどうじゃ。」
このまま息を吹き返すかどうかは分からぬが、しばし様子を見ようか。」
「ひょっとしたら、直ぐにお終いになるかも知れぬしな。」
兄はひょいと、貴人を雑魚の入ったびくと一緒に肩に乗せて、あばら家へと入った。
粗末な寝具に横たえて、様子を覗う。
潮かそれとも涙か、眦からつっと一滴したたって、貴人は消え入りそうな細い声でうわごとを言った。
「おかみ」
「どこに、おわすのです天児を、お探しにはならぬのですか」
漁師の兄弟は顔を見合わせ、ひとまず近くの僧の庵に相談に走った。
今は読経で手が離せぬゆえ、しばらくしたらNeutrogena 細白晶透光能面膜機行ってしんぜようと、僧が言うので、ひとまず兄弟は帰宅した。
何より、臥した貴人が気に掛かった。
大抵、網に掛かる貴人は事切れており、こうして息のあるものはまれだった。
小さく息をする都人の顔を、まじと覗き込んだ弟が驚いたように言う。
「おおなんと、これは美々しい童じゃ。」
都人は、こうも美しいのかのう。武者とは、大違いじゃ。」
薄く化粧をした小さな顔は、閉じた目の上に刷くように置き眉を施した、雅な姿だった。
主上と口走った所を見ると、平氏、しかも身分の高いものに関わる貴族に違いない。
粗末な夜具に移して、そっと身を延べてやると、身じろぎもせぬままはらはらと貴人は泣いた。
見かねた兄が涙を吸ってやると、薄く目を開いて兄を見つめ嬉しそうに「おかみ」と口にする。
「違う、俺はそのようなものではない。」
「天児(あまがつ)の主上。」
そう言ったきり、目は空ろに見開かれ、意識は混沌としていた。
「天児とは、なんであろうの?」
兄弟は、いぶかしげな表情を浮かべてともかく、一息をついた。
おそらくは、我らとは反目する、平氏の天皇さま、もしくは上皇さまあたりであろうよ。」
お側近くに仕えていた者に、間違いは有るまい。」
「寵童かもしれぬな。」
僧に報告し、検非違使所(役所、警察のようなもの)に知らかどうか、兄弟は思案に暮れた。
「ともかく早く、気が確かになると良いのだが」
白い顔でとろとろと眠りについたまま、濡れた衣服を改めるNeutrogena 細白晶透光能面膜機間も硬く目を瞑ったきり、ひたすらに眠るだけであった。
時折口走る主上と言ううわごとに、何度も夜中に眠りを妨げられて兄は蒲団を被り直した。
長い髪を乱した紅い直衣の姿は、武人では無いようだ。
水干の姿は、白拍子か?童か?」
どっちであろうな。何にせよ厄介なことじゃ。今日の漁もお終いじゃな。」
ああ、面倒くさい。仕事にならぬ。」
網を寄せると、赤銅色のその手に長い髪を巻きつけ、兄は死骸を手繰った。
腰に差した細工の流麗な二本の黄金の太刀は、おそらく海Neutrogena 細白晶透光能面膜機水で錆びてしまって使い物にはならないだろう。
ここいらの漁師は、死人を拾い上げて寺に放り込むくらいはするが、いささか数が多すぎて辟易し漁へ出るものもまだまばらだった。
兄は、そのまま海に投げ込みたいくらいの気持で、船底に強く叩き落した。
「あうっ!」
貴人が眉をひそめて、呻いた。
「ひやぁっ!兄者、こやつ生きて居るぞ。」
おう。確かに、これはまだ息が在るようじゃな。」
強く眉根を寄せて、麗人が呻いた。
抱えてみると、水鳥の羽根ほどに軽い。
殿上人は、何を食っているのか知らぬが、この軽さはどうじゃ。」
このまま息を吹き返すかどうかは分からぬが、しばし様子を見ようか。」
「ひょっとしたら、直ぐにお終いになるかも知れぬしな。」
兄はひょいと、貴人を雑魚の入ったびくと一緒に肩に乗せて、あばら家へと入った。
粗末な寝具に横たえて、様子を覗う。
潮かそれとも涙か、眦からつっと一滴したたって、貴人は消え入りそうな細い声でうわごとを言った。
「おかみ」
「どこに、おわすのです天児を、お探しにはならぬのですか」
漁師の兄弟は顔を見合わせ、ひとまず近くの僧の庵に相談に走った。
今は読経で手が離せぬゆえ、しばらくしたらNeutrogena 細白晶透光能面膜機行ってしんぜようと、僧が言うので、ひとまず兄弟は帰宅した。
何より、臥した貴人が気に掛かった。
大抵、網に掛かる貴人は事切れており、こうして息のあるものはまれだった。
小さく息をする都人の顔を、まじと覗き込んだ弟が驚いたように言う。
「おおなんと、これは美々しい童じゃ。」
都人は、こうも美しいのかのう。武者とは、大違いじゃ。」
薄く化粧をした小さな顔は、閉じた目の上に刷くように置き眉を施した、雅な姿だった。
主上と口走った所を見ると、平氏、しかも身分の高いものに関わる貴族に違いない。
粗末な夜具に移して、そっと身を延べてやると、身じろぎもせぬままはらはらと貴人は泣いた。
見かねた兄が涙を吸ってやると、薄く目を開いて兄を見つめ嬉しそうに「おかみ」と口にする。
「違う、俺はそのようなものではない。」
「天児(あまがつ)の主上。」
そう言ったきり、目は空ろに見開かれ、意識は混沌としていた。
「天児とは、なんであろうの?」
兄弟は、いぶかしげな表情を浮かべてともかく、一息をついた。
おそらくは、我らとは反目する、平氏の天皇さま、もしくは上皇さまあたりであろうよ。」
お側近くに仕えていた者に、間違いは有るまい。」
「寵童かもしれぬな。」
僧に報告し、検非違使所(役所、警察のようなもの)に知らかどうか、兄弟は思案に暮れた。
「ともかく早く、気が確かになると良いのだが」
白い顔でとろとろと眠りについたまま、濡れた衣服を改めるNeutrogena 細白晶透光能面膜機間も硬く目を瞑ったきり、ひたすらに眠るだけであった。
時折口走る主上と言ううわごとに、何度も夜中に眠りを妨げられて兄は蒲団を被り直した。